| エコノミスト原稿 <テーマ>インターネット時代到来で急騰するネット関連株の行方 ――いつまで続くか”ネットバブル” (1)ネット株は「理想買い」 「ヤフー36倍、マスターネット22倍、光通信22倍、ATL12倍、ソフトバンク11倍」驚く無かれ、過去1年の株価パフォーマンスである。99年は紛れも無く「ネット相場元年」として記憶されよう。何故これ程までに証券史上でも稀な急激な上げが起こったか・・・逆説的だが「将来の収益予想が立たない」からである。収益予想と株価がリンクせず、期待だけが先走る「理想買い」だからである。「何%の利益成長」というのではない、「期待するか、しないか」だけのデジタルな相場なのである。強欲と恐怖が相場を衝き動かす訳だが、この場合「強欲=青天井の楽観」がネット株を覆っている。そしてこの状況は当分続きそうである。巨額の資金(金余り)がインターネット関連をはじめベンチャー企業の投資先を求めているのに対し、インターネット株の供給はあまりに少ないからである。乱暴な言い方だが「ネット株なら何でも良い」状態で、今後続々ネット株が公開してきて選択肢が十分に増えるまではやむをえない。相場的には「理想買い」は一番美味しい局面でもある。
(2)「昔ウォーターフロント、今インターネット」 10年前のバブルの頃、「ウォーターフロント相場」の発想は湾岸開発が進み地価が青天井となり土地持ち企業の価値が膨れ上がるというものであった。今の「インターネット相場」の発想はサイバースペースの開拓が進み一等地を占めるインターネット企業の価値が膨れ上がるというものである。非常に似てはいるが、違う。湾岸開発による地価上昇はバブルの崩壊と共に潰え、正に絵空事だった。サイバースペース開拓は着々と進んでおり、eコマースと呼ばれるインターネット上の商業活動は想像を越すスピードで拡大中である。インターネット革命(情報通信革命、或はIT革命とも言う)は産業革命以来の経済・社会の大変革として日に日にその姿を現して来ており、もはやその進展は疑う余地はない。もっと言えば、現在インターネット革命と言われているものはほんの序章であって、本物の革命は5-10年後に起きると見られる。インターネットと共に育った「インターネット世代」が社会に出て来るからである。そしてその変革の度合いは想像もつかない。想像もつかない変革を株式市場は必死で先見しようと格闘している。あまりに楽観的なのも強欲だけとも言い切れない。
(3)東証マザーズのスタート 別表に主なネット株の新規公開(IPO)からの推移を米国のそれと並べて掲載したが、「ネット株は儲かる」の神話もやんぬるかなの実態となっている。そのパフォーマンスは先進の米国ネット株と比べても遜色なく、2年遅れくらいで米国ネット相場へのキャッチアップが始まったと見るべきだろう。折しも東証がベンチャー市場「マザーズ」を創設、年内2社のネット企業が上場される他、準備中のネット企業22社が公表され、公開ラッシュ前夜。ナスダックジャパンは来夏スタート。ここで投資家はインターネットベンチャーのブレイクを支援し成長を加速させ、企業勃興期(アーリーステージ)の高成長の恩恵を株高で享受しようとする訳だ。「赤字でも、資産がなくても、将来の収益に期待して」の投資というハイリスク・ハイリターンをきちんと認識すべきだろう。それは銀行融資に出来ない直接金融の使命でもある。上場しても期待した成長を果たせないところもあるだろうし、倒産することもある。(NASDAQ公開を目指した広告付き無料インターネット接続のハイパーネットは97/3期に売上10億円を上げながらその年末自己破産。負債総額37億円。)些か見切り発車で性急に思えたマザーズだが、ともかくもベンチャー投資市場創設という証券史のエポックメーキングであり、日本のピープルズキャピタリズム(草の根資本主義)のチャレンジである。投資家が企業と市場をどう育てて行くのか注目したい。願わくば世界に羽ばたけるようなネットベンチャーの我等の手から。
(4)ネットバブルを超えて バブルはバブルのままなら消えて無くなるだけで正当性はない。ただし、バブルをテコに投資をし企業買収をして血肉化、より速い成長・事業の深耕拡大が達せられるなら社会通念上許容されるのではないか。それは企業や経済全体の成長へのブースターたり得る。バブルに姿を借りた時代の意志というか、神の見えざる手というものである。ネット株のオーバーバリューの意味合いは産業社会のインセンティブでもある。即ち人・モノ・金・情報を引きつけ、一気に情報通信革命を進展させる。そこでは従来型の企業のように利益の極大化で時価総額を増大させるのではなく、時価総額の極大化で利益の極大化を図るというような経営革命があるのかも知れない。とりわけインターネットの世界はドッグイヤーであり、アイデア一つが莫大な富を産み、消長浮沈が激しく、秒進分歩の技術革新の上に壮大なバトルが繰り広げられている。参入障壁などなく、マスマーケット囲い込みに個人から世界的大企業までが加わる大競争、覇権争いは熾烈でウィナーテイクスオールな世界、生き残りは至難である。取ったはずの天下すら一夜にして引っくり返る。技術で勝てなければ買ってしまえばいい。経営にはひらめきやセンスと何よりスピード感・ネットワーキングが要求される。猛スピードで変革・成長する市場や企業を支えるのは投資家のリスクマネー以外にありえない。高株価策は投資家を惹き付けると同時に、経営者・企業への高いプレッシャーでもある。食うか食われるかの世界では時価総額が共通語、株式持ち合いの使えない今、株価が安ければライバルに買収されてしまう。(大手プロバイダーのリムネット・東京インターネットとも米PSIネット傘下入り。)AOLのネットスケープ買収とか、アップルの凋落と復活とか、この業界の勢力図は変動し続けドラマティック。最新動向はzdnet、cnet、nikkeinetのITニュース等でフォローしたい。尤も相場もいつまでも「ネット株なら何でも」買い上げる訳にもいかない。高株価に驕り高ぶり何も為さないバブル企業には市場から鉄槌が下るのも時間の問題だろう。
(5)来年の見通しと投資戦略 NASDAQのネット相場はブラウザ戦争→ポータル戦争→eコマース→インターネットインフラ(高速/モバイル/Linux)と市場の人気は変遷して来ており、その都度スター株が誕生しては消え、「栄光のインターネット覇者は誰か?」を試行錯誤しながら市場がふるいにかける。指標であるインタラクティブウィーク・インターネット指数はネット50社からなる時価総額加重平均型指数だが、98年に2.5倍・99年に2.2倍になって全く順調だが、その実98年には3ヶ月で38%の調整・99年には4ヶ月で35%の調整を挟んでいる。個別で言えば相当キツイ下げを覚悟しなければならないということだ。キャッチアップする日本でもそうした経験が参考になろう。周期的に「ネットバブル警戒論」が再燃して相場が冷やされ、株価が調整局面を迎えるのは不可避であるが、そうした健全な調整は寧ろ好感すべきもので、長期的成長見通しに変わりがなければ好買い場となろう。幾多の試練を経ながらも「結局信じた者が勝つ」のではなかろうか。かのフロンティアスピリットに富む米国ですら「錯乱」「根拠無き熱狂」「正気の沙汰ではない」と非難轟々の中の加速度曲線であった。ネット株は別表の通り株価高騰と株式分割の相乗効果により中長期保有で資産100倍化も夢ではないが、それも目先の急騰急落を耐え抜いた不動の信念あればこそと確認しておきたい。オンライン投資家の激増もネット株人気を支えよう。
インターネットビジネスは多産多死、故に兎に角「勝ち組投資」が肝要である。より大きいマスマーケットを押さえられるか、抜きん出たブランド力がカギ。インターネット財閥を目指すソフトバンクは米国の勝ち組ビジネスモデルを次々日本に持ち込んでの合弁設立を急ぎ安定感、インターネットベンチャーへの出資を加速させているのは光通信も同様。ヤフーの収益拡大には弾みがついてきており、ネット株の模範生。トレンドマイクロは海外展開を加速。NTTドコモはiモードの拡大が続いており@nifty(富士通)以上のポータルに化ける可能性。広帯域通信端末化するプレステ2のソニー、eコマース支援のセブンイレブン・ヤマト運輸・ベル24、ネットセキュリティのセコムなどの既存大企業のインターネットシフトも急。公開準備企業では電子ショッピングモールの楽天、光通信との貸しサーバー事業で急拡大のクレイフィッシュ、iモード向けブラウザ「ネットフロント」で著名なアクセス、広告代理店のサイバーエージェント、自動車ネット販売のオートバイテルJ、編集力に違いのサイトISIZEのリクルートなどが期待されている。個別で持つにはなかなかピンチに持ち切れないので専門家運用のネット株投信もお勧め。本物のインターネット勝利者を求めてマーケットは苦闘してゆくだろう。誰も経験したことのない革命相場、異常な高PER高PBR、高いボラティリティ、ハイリスクハイリターン…それでも「ブームではない、時代を買うのだ」とファイトしてみる価値はあると思う。
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