. 週刊エコノミスト原稿
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98/10/20号 a エイベックス他、台頭する新興企業

ico_hand.gif (123 バイト)「エイベックス」と聞いてピンとこない方はかなりオヤジが入っている。trfglobe・安室奈美恵・H jungle with t・V6・MaxELT・相川七瀬・浜崎あゆみ・・・聞いた名前が一つくらいはあるだろう。それら音楽アーティスト達のCDの発売元がエイベックスである。

ico_hand.gif (123 バイト)出発は88年、ダンスミュージックの輸入販売会社であったが、自社レーベル「avex trax」を設立、「スーパーユーロビート」他ディスコミュージックのコンピレーション(編集)CDを世に出してこれがヒット。更にプロデューサーに今を時めく小室哲哉を起用、94年にtrfが大ブレイク!でこれが大躍進の始まりになった。以降前記のアーティスト達の華々しい活躍はご存じの通りで、globeの「globe」(963月)は400万枚、安室の「SWEET 19 BLUES」(967月)・ELTの「Time To Destination」(984月)は共に300万枚ものスーパーセールスを記録。エイベックス軍団は一大ブームを巻き起こし、業界の最強勢力にのし上がり他を圧倒。業界最大手ソニーミュージックの顔色を失さしめた。(ソニーミュージックも立て直しに小室をプロデューサーに迎えた。)エイベックスはこの他六本木のディスコ「ヴェルファーレ」を運営、また共同でライブハウス「ゼップ」を東阪福札で展開、ダンスミュージックの浸透を図り、ファッションのリード役を担っている。日本のTV文化の影響の大きいアジア諸国への展開も視野に。

ico_hand.gif (123 バイト)天下を取った革命児・エイベックスのここからの経営課題は、ゲームソフト会社同様に「ヒットは水物」を如何に克服するかとソフト資源の有効活用。ミリオンセラーに依存し過ぎない強靭な収益基盤を持つには、裾野の広いアーティストポートフォリオの構築と人気アーティストの絶えざる発掘・育成が欠かせない。又、映像を含めたマルチメディア向け高付加価値ソフトの制作も必要だろう。

ico_hand.gif (123 バイト)公募6500円に対し10/1の店頭公開初値は5000円。相場環境の一段の悪化や先日のソニーミュージックの業績下方修正が響いた形だが、実は証券会社の稚拙な公開政策に因る面も大きい。「もっと早く公開出来なかったのか」とか、「公募玉は長期保有の投資家に優先すべきではないか」とか疑念は残る。とは言え「エイベックスの奇蹟」が少しも否定される訳ではない。

ico_hand.gif (123 バイト)日本経済の構造改革において求められるのは規模よりも効率である。護送船団方式でなく自己責任、大艦巨砲主義ではなく機動力、生産者本位でなく消費者密着である。そうしたパラダイムシフトを「非効率な大企業を打倒してゆく」「新市場を創出する」という目に見える形で実現してゆくのが新興企業である。この例は設立から10年で公開したエイベックスにとどまらない。トレンドマイクロ(設立から9年)・メガチップス(同8年)・もしもしホットライン(同11年)・アクセス(同4年)・FSAS(同9年)も同様。成功ベンチャーとしての先輩格はスクウェア(同7年)・良品計画(設立から6年)・光通信(同8年)・サンマルク(同6年)・ワタミフード(同10年)。昨年公開のヤフーは何と設立から110ヶ月で公開を果たしている。

ico_hand.gif (123 バイト)勿論、これらスピード公開の面々は驚異的な利益成長も記録している。トレンドマイクロ(3年間で経常利益400倍)・メガチップス(同9倍)もしもしホットライン(同4.9倍)・アクセス(同3.6倍)・FSAS(同2.3倍)の他、間もなく「今世紀最後の大型上場」を果たすNTTドコモは設立して7年だが、あの巨艦にして連結純利益が3年で8.8倍ものド迫力である。11月には無添加化粧品とサプリメントの通販で大躍進のファンケルの公開も予定されている。株式市場には人知れず魅力的な投資対象が続々用意され、新たな資金の流入を待っている訳である。これらルーキーが相場再生の鍵となろう。

ico_hand.gif (123 バイト)世は「不況」「金融恐慌」とかまびすしいが、何食わぬ顔で大出世を遂げている新興企業がこのように存在している。これら企業、これらに続かんとする企業の台頭が日本経済の希望の光であるのは言を待たない。森は老いた巨木が倒れることで光が差し、芽吹いたばかりの小さな若木が育つ。それが連綿と続けられて来た世代交代の姿である。巨木が倒れるのを悲しんでいるのは単なるセンチメンタルに過ぎない。我等は若木の成長こそ楽しむべきであろう。我等の投資対象はこちらに決まっている。当たり前過ぎて指摘もされないが、「経済再生の芽も、相場再生の芽も出ている」こと、明確に意識したい。

ico_hand.gif (123 バイト)銀行の貸し渋りで「これから」の芽が摘み取られることは何としても避けねばならない。それら中堅・ベンチャー企業に資本を供給出来る仕組み作りが欠かせない。健全な資本市場で直接金融の道を拓かなければならない。同時に「次の時代を担う企業への投資」こそが明るい未来を用意するとの認識も投資家サイドに絶対不可欠だ。「銀行が潰れる」「資産を守れ」の大合唱の下、タンス預金が激増し運用も過度に安全志向となっているが、誰もリスクを負わないところに経済の繁栄などありえない。投資家のレベルに合わせた経済しか用意されないのだ。我々大人が未来を信じリスクを負わなければ、子供達に何を遺せるというのか。糞も味噌も一緒くたに売り込まれた今日、成長株投資をもう一度見直したいと思う。


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筆者
之助

株向委委員長。証券会社勤務。

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コーナー説明
週刊エコノミスト掲載草稿
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